青針?ブルースティール?あの青い針に関するまとめ

  • 投稿日:2023年12月20日

こんにちは、中野ブロードウェイの時計店「れんず」です。


△ランゲ&ゾーネ 1815 アップ/ダウン シルバー 234.032

青針。

ご存じでしょうか。
もしご存じでなくても、画像をご覧いただければどれが「青針」なのかは一目瞭然かと思います。
今回の記事のテーマはこの「青針」です。よろしくお願いします。

ブレゲ、IWC、カルティエなど、様々なブランドで採用されているこの艶のある青い針。
どこかひとつのブランドが好んで使っているわけではなく、多数のブランドがあらゆるコレクションで採用しています。
ブルースティールとも呼ばれるこの針の歴史は古く、少なくとも1783年から機械式時計に使われてきました。
出典:ブレゲ>歴史>針について
△ブレゲ針の項目にて、「彼は当初、イギリス製のゴールドの針を使用していましたが、1783年、ゴールドまたはブルースティールでできた極めて斬新な針を生み出します。」との記載がありました。

その場の明るさや見る角度によって表情を変え、愛好家でなくてもその美しさは一目瞭然。
洗練された印象を感じさせる重要なパーツとなっています。
そしてこの青い針は、そのまま「青針」「ブルースティール/ブルースチール」と呼ばれ、多くのファンに親しまれています。

3針全てを青くしているお時計もあれば、アクセントとしてクロノグラフ針やGMT針、ポインターデイトの針のみを青くしているお時計もあります。

青針はどうやって生まれる?

金属を使って何かを形成するとき、焼き入れ焼き戻しという作業を行います。
焼き入れで硬さを上げて、それだけだと壊れやすいので、焼き戻しで靭性(粘り強さのこと)を上げるそうです。

これらは同時に強くすることができないので、基本的にこのふたつの作業を順番にセットで行います。
金属を熱して冷やす流れは変わりませんが、熱するときの温度や時間など、条件は全く異なっています。
この、焼き戻しの際の温度を上手く調整することで、青針の美しい青が作られています。

金属は加熱されたとき、空気中の酸素と反応して薄い膜を作ります。これを酸化被膜と呼びます。
ちなみに「酸化被膜によって生まれた色」を、テンパーカラーと呼びます。
酸化被膜自体は透明ですが、被膜の厚さによって針の色味が変わってしまうため、均一に美しく色を整えるのは結構難しいようです。

参考:セイコー テンパー針 , 酸化発色の基礎知識

この酸化被膜は、それ以上金属が酸化していかないようにするための保護膜として働き、ついでに電気伝導性というのも下がるみたいです。
電気を通しにくいということは、間接的に耐磁性も上がっているのでは?と思いましたが、針の力だけではあんまり変わらないかもしれないです。

※電気と磁気は違うけど、電気が流れる場所に磁力が働くので、電気が好まない場所なら磁力もあんまり居つかないんじゃない?と思いました。
全ての答えを知っている全知全能マンがいらっしゃいましたら、こっそり教えてください。

参考:https://www.token.co.jp/estate/useful/archipedia/word.php?jid=00016&wid=03273&wdid=01#

ちなみに

私、焼いて作った青針って折ったら中も青いのかな?と考えていた(熱によって変色する→内側まで火が通って青くなる??と思っていました)のですが、この酸化被膜の話を知ると「そんなことなさそう!」と思えますね。
折ってもいい青針をお持ちの方はぜひ私に断面図を見せてください。

また、この件に関して会社の先輩に「青針の断面はローストビーフ型かとんかつ型、どっちだと思いますか(内側が青くなっていくのか、外側に青いのが纏わりついているのか)」と聞いたところ、「なんでも食べ物で例えるんじゃない」「とんかつ型だと思うよ」とのことでした。ありがとうございました。


 
△青針の断面イメージ画像です。お納めください。

針だけじゃない

機械式時計の裏側がガラス製になっていて、中のムーブメントを見ることができる仕様のお時計も多数存在します。
その中で、皆さんは青いネジを見たことがある筈です。


写真:ノモス タンジェント TN1A1W2/139

こちらも、青針と同じようにして作られます。
効果は同じく酸化防止のために始まったものなのかなと思いましたが、「じゃあなんで全部のパーツを青焼きにしないの?」と私の中の知的好奇心の塊が手を挙げました。

少し考えてから、純粋に「コストがかかるから」かなと思いました。
あとは「全パーツを均一の青にするのは難しく、美しくないから」とか。
「銀色の中に青がちょっとだけ入るからこそ美しいから、全部には使わない」とか。
そんな理由が考えられそうです。

また、青ネジを全然採用していないブランドも見られます。
時計業界の中でも長い歴史と伝統を持つヴァシュロンコンスタンタンやパテックフィリップ。
彼らが(少なくともムーブメントの見える場所に)青ネジを使っていないところを見ると、「必須ではないけど、あると嬉しい」みたいな立ち位置なのかもしれません。
部品が錆びてしまう前にオーバーホールしてねという考え方でしょうし、やはりメーカー的には「ビジュアルの良さ、クラシカルな雰囲気の演出」の為に青針を使っているような気がしました。

これは私の所感ですが、ランゲ&ゾーネやノモスなど、ドイツブランドの方が青ネジの採用率が高かったように思いました。
もしかすると、ネジの青焼きって元々はドイツ発祥の技術なのかもしれませんね。スイスブランドは母数が多いからないブランドも見つかりやすいとはいえ、それにしてもドイツ時計の青ネジ率が高かったように思います。

焼かなくても作れる

昔の時計職人たちは針やネジなどをひとつひとつ焼いて、全てのパーツが同じ色味になるよう作っていたはずです。
しかしそれではすごく大変。手間も時間もかかります。
現在では、より安定して多くの青い針、ネジを作るため、違った方法を使うメーカーもあるようです。

薬品で化学反応を起こして後から針に被膜を張ったり、普通に色を塗ったり。
「青焼きしてます!」「色塗ってます!」と明記するブランドも基本ないため、高級時計ブランドの中では見分けがつかないです。
私はなんとなく、つやつやしていて金属っぽければ被膜、マットな質感であれば塗ったもの、くらいの認識です。
時計沼の深淵にお住まいの方には見分けられたりするのでしょうか。知りたいことでいっぱいです。

参考:クロノス ブルースティール

まとめ

・青針は基本的に化学反応を利用しており、酸化被膜という膜によって青くなっている。
・作り方は、焼いたり浴びせたり漬けたりと様々で、酸化を防ぐ効果がある。
・コストカットの為に色を塗っているだけというパターンも存在する。
・針だけでなくネジにも青焼きすることがある。
・綺麗!

調べる先々で興味や疑問が湧くテーマでした!
知識を満たした先で次の疑問が湧いていく時間が一番楽しいです。

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